代表挨拶
とやまCDEネットワーク(旧とやま糖尿病療養支援機構)
代表 戸邉一之
我が国の糖尿病患者は約1000万人と推定されており、増加傾向が続いております。網膜症・糖尿病腎症・心筋梗塞・脳卒中などの糖尿病合併症による生活の質の低下、生命予後への影響を考えると早急な対応が求められています。また、糖尿病があると、認知症・悪性腫瘍にかかりやすくなったり、サルコペニア(筋力や筋肉量の低下)やフレイルの状態が進行しやすくなります。
合併症予防のための血糖管理には、食事療法と運動療法を基本にした生活習慣の改善が必須です。また服薬者に関しては服薬遵守も重要です。 このように、生活習慣、療養行動の徹底が治療の成否にかかわるのが糖尿病診療の特徴です。 また糖尿病の大部分は無症状であるので、患者自身の理解を得て診療を継続するには適切な情報提供が重要です。 いまだに糖尿病患者の約4割は未受診・中断例であると推定されており、この中から特に重度の合併症進展例、すなわち、糖尿病網膜症が進行して視力が低下した状態や腎機能が低下して初めて紹介される症例が少なくありません。
このような糖尿病診療の特徴をふまえますと、医師のみでなく、複数の医療職が糖尿病患者に多面的にアプローチし、正しい知識に基づいて、適切な療養行動を促すことが重要です。 2000年には、日本糖尿病療養指導士(CDEJ)の認定が開始され、コメディカルによる糖尿病療養指導に関して著しい進歩があり専門医を中心とするチーム医療が著しく普及いたしました。 しかしこの資格は、資格取得可能な医療職種が、看護師、管理栄養士、理学療法士、薬剤師、臨床検査技師と限られており、また施設条件が厳しく実際には糖尿病専門外来を実施している病院、 専門クリニックに勤務をしていなければ取得困難です。 したがって取得者は都市部に集中していることが問題となっております。
そこで、富山県においても、日本糖尿病協会の支援を受けて、特定非営利法人とやま糖尿病療養支援機構を設立し、とやま糖尿病療養指導士(Tym-CDE)の認定制度を開始し、 その育成や活動の支援を行うこととなりました。Tym-CDEではCDEJよりも取得可能な医療職種を拡大し、必ずしも糖尿病専門病院・クリニックに勤務していなくても取得可能な資格としました。 富山県下の糖尿病療養指導に関わる多くの職種の皆様が、とやま糖尿病療養指導士(Tym-CDE)の活動に参加され、糖尿病療養の地域偏在解消に向けて、ご協力頂ければ幸いです。またこのような活動が、糖尿病の予防や、糖尿病患者の生活の質や生命予後の改善につながることを祈念致します。